※本記事では婚姻届を提出して法律上の夫婦になることを「法律婚」と表現します。
法律婚をすると、お付き合いをしていた頃の二人から関係はどのように変わるのでしょうか。
「家族になれる」
「名字が変わる」
「一緒に暮らす」
なんとなくそのようなイメージを持つ方が多いかもしれません。
ですが婚姻届を提出して法律上の夫婦になるということは、単に気持ちの上で「家族になる」だけではありません。
法律婚をすることで二人の間にはさまざまな権利が生まれる一方、夫婦として負う義務や一定の制約も生まれます。
今回は法律婚をすることによって何が変わるのか、代表的な7つのポイントをご紹介します。
夫婦の氏をどちらかに決める
現在の日本では法律婚をする場合、夫婦は夫または妻のどちらか一方の氏を選び、同じ氏を名乗ります。
昨今、仕事上などで旧姓をビジネスネームとして使用することも増えてきましたが
戸籍上は夫婦どちらかの氏に必ず統一されることとなります。
「どちらかが名字を変える」というのは、法律婚による分かりやすい変化のひとつです。
夫婦には「同居・協力・扶助」の義務がある
民法・第752条 (同居、協力及び扶助の義務)
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」
法律上の夫婦になるとお互いに同居・協力・扶助する義務を負います。
簡単に言えば夫婦として一緒に生活し、お互いに支え合うことが法律上も求められるということです。
もちろん、仕事や介護など事情があって別々に暮らすことまで直ちに問題になるわけではありません。
ただ「夫婦だから支え合う」というのは単なる道徳的な話だけではなく、法律上の義務でもあります。
生活に必要なお金を分担する
民法・第760条 (婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
法律婚をすると、夫婦は婚姻生活に必要な費用を分担する義務を負います。
これを「婚姻費用」といいます。
食費や家賃、光熱費、医療費、子どもの生活費や教育費など、夫婦や家族が生活していくために必要なお金が含まれます。
(ただし必ず半分ずつ負担しなければならないという意味ではなく、それぞれの収入や資産などに応じて分担することになります。)
また夫婦が別居したからといって、当然に婚姻費用の負担がなくなるわけではありません。
婚姻関係が継続している間はたとえ別居中であっても、婚姻費用の分担が問題になることがあります。
法律婚をしても財産のすべてが「二人のもの」となるわけではない
民法・第762条1項 (夫婦間における財産の帰属)
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
「結婚したら夫婦の財産は全て共有になる」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし日本の夫婦財産制は、原則として「夫婦別産制」です。
結婚前から持っていた財産や婚姻中に相続や贈与で取得した財産などは、原則としてその人自身の財産になります。
ただし離婚する場合には少し考え方が変わります。
婚姻中に「夫婦が協力して取得した財産」については名義がどちらになっているかにかかわらず、財産分与の対象になることがあります。
例えば一方が専業主婦・主夫で直接収入を得ていなかったとしても家事や育児を担うことで、もう一方が仕事を続けられる環境を支えていたのであれば、その貢献も夫婦の財産形成を支えたものとして考えられます。
そのため婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産であれば、収入を得ていた側の名義だからといえどもその人だけの財産とは言えない場合もあるのです。
(裁判所も、財産分与について「夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を離婚する際又は離婚後に分けるもの」と案内しています)
つまり「法律婚をした瞬間から財産がすべて共有になる」わけではありません。
一方で「婚姻中に二人で築いた財産は、離婚時には二人で清算することがある」ということになります。
不貞行為は離婚や慰謝料の問題になることがある
法律婚をするとパートナー以外の人との性的関係は単なる二人の間の約束の問題だけではなくなります。
民法では不貞行為は裁判上の離婚原因のひとつとされています。
また不貞行為によって相手方が精神的な苦痛をうけた場合などには、慰謝料請求が問題になることもあります。
法律婚によって夫婦関係が法律上保護される一方、その関係を侵害する行為について法的責任が生じる可能性もあるということです。
婚姻関係を終えるには、離婚という手続が必要
単なる恋人同士であれば、一方が別れを告げることで関係が終わることもあります。
しかし法律婚ではそうはいきません。
婚姻関係を終えるためには、必ず離婚の手続きが必要となります。
夫婦双方が離婚に合意している場合には協議離婚として離婚届を提出することができますが、どちらか一方が離婚に同意しない場合には家庭裁判所での調停や、場合によっては離婚訴訟といった手続が必要になります。
夫婦間の話し合いで解決できない場合には、婚姻関係を解消するまでに長い期間を要することもあります。
つまり法律婚には「簡単には解消できないからこそ関係が守られる」ことと「自分一人が関係を終わらせたいと思っても自由に終わらせられるとは限らない」ことという、表裏一体の側面があります。
配偶者には相続権がある
法律婚の大きな特徴のひとつが相続です。
法律上の配偶者は相手が亡くなった場合、常に相続人になります。
(子どもや親、兄弟姉妹など他の相続人がいる場合には
その人たちと一緒に相続することになります。)
つまり婚姻届を提出して法律上の夫婦になることで、相手の死亡時には「配偶者として財産を相続する権利」が法律上保障されます。
これは、法律婚によって得られる大きな保護のひとつです。
法律婚は「義務」と「保護」がセットになった制度
ここまで見てきたように、法律婚をするとさまざまなルールが生まれます。
同じ氏を名乗ること。
お互いに生活を支えること。
生活費を分担すること。
不貞行為が離婚や慰謝料の問題になり得ること。
関係を終えるときには離婚という手続が必要になること。
こうした点だけを見ると「法律婚には制約が多い」と感じる方もいるかもしれません。
とは言え、これらは必ずしも一方的な「制約」ではありません。
例えば婚姻費用を負担する義務があるということは、反対から見れば収入が少なくなった場合などに配偶者から生活費の負担を受けられる可能性があるということでもあります。
財産分与も自分名義の財産を分ける可能性がある制度である一方、家事や育児などによって夫婦の財産形成を支えてきた側を守る制度でもあります。
相続権についても法律婚を選ぶことで当然に得られる大きな保護です。
夫婦を一定のルールの中に置く「制約」と、そのルールによって夫婦を守る「保護」の両方を持ち合わせた法律婚は、もともと他人であった二人を法律上の家族として結び、その関係を守るためのさまざまな仕組みが用意された制度といえます。
だからこそ、これまで多くの人に「結婚」の一般的な形として選ばれてきました。
ただし「世間一般で普通だから」という理由だけで選ぶのではなく、法律婚をすると二人の関係がどのように変わるのかを知った上で選ぶことが大切ではないでしょうか。
なぜなら着目すべきは結婚という枠組みそのものではなく、これからの末永い人生を共に歩む二人がどのような関係を築きたいかということにあるからです。
では婚姻届を提出せず夫婦として暮らす「事実婚」であれば、このような義務からすべて自由なのでしょうか。
実は事実婚であっても法律婚とよく似た権利や義務が生じることがあります。
次回は事実婚でも生じる権利と義務についてご紹介します。

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